月の夜の誘惑
ある夜、広大なロナーガン家の敷地内にある湖で、マギーは一糸まとわぬ姿で泳いでいた。
二年前から、マギーはここに住み込んで家政婦をしている。
この家の当主は孤独な老人で、孫たちにも見捨てられたというが、マギーにとって、今や家族のような存在となっていた。
天涯孤独だった私が、やっと居場所を見つけたんだもの……。
そんな物思いにふけっていると、突然、木の茂みが動く音が聞こえた。
男性だわ! 私が気づかないのをいいことに、ずっと眺めていたのね。
許せないほど卑劣な男 ――だけど、なんてハンサムなのかしら。
いったい誰だろうといぶかるマギーに、男性は静かに名を名乗った。
次の瞬間、マギーの体は震え始めた。
六年前、フィオナはジャスティンに恋をし、すべてを捧げた。
彼も自分を愛していると思っていたのに、別れの言葉さえ告げぬまま、彼は去っていった。
すがるような思いで留守番電話に入れたメッセージにも、連絡をしてくることもなく。
以来フィオナは男性を信じずに生きてきた。
やっと傷も癒えかけた今、ジャスティンが目の前にいる……。
何事もなかったように話しかけられ、怒りに震えるとともに、フィオナは不安も覚えていた―― 庭に転がった玩具を横目で見ながら。
ジョディは山道をレンタカーで走りながら、必死に涙をこらえていた。
本当なら、今夜はロマンチックな新婚初夜になるはずだった。
しかし婚約者を直前になって友人に奪われてしまったため、ひとり、ハネムーンに行く予定だったイタリアに来たのだ。
神様にまで見放されたのか、深いわだちにはまって車のタイヤがパンクした。
途方に暮れていると一台のフェラーリが止まり、中から男性が現れた。
信じられないほどハンサムだが、ひどく尊大な態度だ。
彼はロレンツォと名乗り、助けを求めるジョディに言い放った。
「きみが僕の妻になり、ぼくを助けてくれるなら手を貸そう」エイミーは、ボスであるアントン・ツェルとともに、エキゾチックな雰囲気のレストランでディナーをとっていた。
実のところ、彼の秘書になったのはほんの数時間前だ。
採用が決まったとたん、エイミーは異国に連れていかれ、忙しいスケジュールにつきあった。
今はやっと訪れた休息のひとときだ。
アントンはやり手の実業家として高い名声を博していて、雑誌に“世界一ハンサム”と評されるほど魅力的な男性。
そんな彼を前にして、もちろんエイミーも心ときめかないわけではない。
でも、仕事とプライベートはきっちり区別しようと決めていた。
当のアントンが、正反対の考えだとは夢にも思わずに。
一年前、エリーザはサルバトーレを愛し、彼の子を身ごもった。
だが、サルバトーレは自分の子だと信じようとしなかった。
口論のあげくエリーザは小さな命を失い、憎しみをいだいたまま、彼のもとを去った。
いまは宝石店で働くエリーザを、ある日サルバトーレが訪ねてくる。
エリーザはさる王家の戴冠用宝玉を扱う立場にあり、その身を案じた彼女の父親の依頼で護衛しに来たのだという。
エリーザにとってはつらすぎる再会だった。
不本意ながらアパートメントまで同行を許したエリーザに、サルバトーレはさらなる要求を突きつけてきた。
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